4月某日、私は興奮気味に深夜にメッセージを打っていました。 

HMK
HMK
CloudflareがCMS出したんすわ....マジで福音かもしれん。
触ってる感じ、管理画面はWPライクにしてありつつ、テーマはAstroといういいとこ取り。Vibecodingとも親和性高し。
決めました。俺これに全賭けします 💀
某氏
俺も全く同じもの見てた。
はい、私も移行します。
だってCloudflareだもの。

発表初日にClaudeCodeをぶん回しながら、開発中だったこのサイトをEmDashへ移行しはじめて、数日。
おおよその要素を移し終わったランナーズハイの中、某氏に 「いいぞーこれー!」 と送っていたのが概ね上の流れです。

というわけで、 前のポストから引き続いて のWebリニューアルのお話の技術面の話の一つとして、EmDashへの移行の話を書いておこうと思います。

なんの予告もなく突然本年2026年の4月1日に登場したばかりのEmDash、実際にコーポレートサイトのリニューアルまで至った例はまだまだ少ないと思います。

多少なりとも皆さんにその魅力を伝えていければと思う次第です。

WordPressへの気持ち、正直なところ

最初に言っておくと、私はWordPressを素晴らしいと思っています。

レンタルサーバーへの導入は死ぬほど簡単ですし、テーマも豊富、メンテナンスも活発です。Web制作界隈では避けられがちなGutenberg(WP標準のブロックエディタです)も、個人的にはかなり気に入っています。ここ数年受けてきたWP案件はGutenbergを使う前提で構築してきましたし、社内テーマもGutenberg対応を進めてきました。

WordPress、あかんか?
WordPressの編集体験自体は割と好きな方です。

過去に行ったWordCampで聞いたセッションで、「プラグインが動かなくなったら報告してほしい」「後方互換が確保できていないのはWP的にはバグ」という言葉も強く印象に残っています。

リップサービスもあるでしょうが、パブリックな場でそれを言い切ることへの、ある種の崇高さみたいなものを感じました。

ご存知の通り課題もあります。

セキュリティ問題は多く、WPのセキュリティ問題の96%がプラグイン起因とも言われていて、プラグイン起因によるサイトアタックでマイニングツールを走らされたケースなども実際に目にしてきました。

加えてACF・SCF騒動のようなお家騒動も、WPを使い続けるうえでいろいろと考えさせられる機会になりました。

ACF/SCF問題
開発者としては思うところのある一件。そしてまだ完全に解決していない。

それでも、こなれたWPの編集体験は捨てがたいです。他のサービスに乗り換えるにしても「そのサービスがなくなったらどうするの?」問題が常につきまといます。「セルフホスティング可能で、見た目まわりは今どきの作り方でできる」という観点で考えるとWPをヘッドレスCMSとして割り切って使いつつフロントエンドだけ別に作る、という構成は自然な着地点でした。

4バージョン作ったフロントエンドの話

少し弊社の話をすると、フロントエンドの主戦場は Angular → Vue → Nuxt.js という変遷をたどっており、今は主にVue3ベースの仕事が多いです。
やっていることの割に、不思議なくらいReactと縁がない会社です。

今回のリニューアル計画では、以下の4構成を実際に手を動かして比較しました。

(´-`).。oO(ちなみに最初のコミットは 2023年4月 です)

フレームワークに翻弄されるモーゼ
  • Vue3 (PoC段階)
  • Nuxt.js (静的サイト化を進めた)
  • Next.js (どうせだしReactでやってみる?とトライ)
  • Astro (良さそうなの出てきたなーって….)

……さらっと書きましたが、これはある意味、自分の仕事の遅さと、Webフロントエンド界隈にありがちなフレームワークのトレンドの急速な入れ替わりに振り回されてきた話でもあります。

どれで作るかを試していたら、いつの間にかそれ自体が目的になっていたというか。

(心の声: 個人開発してるとならんか?!こういう感じに!)

静的サイトビルドをする前提で試行錯誤しましたが、正直なところ開発体験として微妙な部分が多かったです。最終的にNuxt.jsで進めることに決めた理由は、「書き慣れ」というやや消極的なものでした。

「静的サイト」というのはザックリ言うとあらかじめHTMLを全部作っておいてサーバーに置く方式なのですが、記事を更新したりプレビューしたりするたびに「じゃあいつHTML作り直すの?」という問題が出てきます。

これは特定のフレームワークに限った話ではなく、試したフレームワーク全部に共通していた悩みでした。どれを選んでも一定の割り切りが必要という状況で、だったら 書き慣れたNuxt.jsとWPの組み合わせ でとりあえず回しながら、 諸問題は中長期的に解決 していこう ——そういう判断で落ち着いたわけです。

まぁそんな流れの後に合間の時間で作りつつ、比較的大きめのお仕事があったりで後回しになったりしてモタモタしている間に登場したのが EmDash だったわけです。

EmDashとは何か

EmDashは、2026年4月にCloudflareが 「WordPressの精神的後継者」 として発表した、オープンソースのCMSです。

さっきから出てきているCMSというのはコンテンツ管理システムのことで、ザックリ言うと「記事を書いたり管理したりする仕組み」のことです。WordPressもCMSのひとつです。

構造の違い

WordPressの場合、WPのコアがどんと中心にあって、そこにテーマ(見た目)やプラグイン(機能拡張)を追加していく構成です。EmDashはその逆で、Astroで作った自分のサイトにEmDashをプラグインとして追加するイメージです。「自分のサイトが主役で、CMS機能を後付けで足す」と言えばわかりやすいでしょうか。

動かし方の違い

EmDashは動かす場所は Cloudflareのエッジサーバー が基本です。
エッジというのはユーザーの近くに分散して置かれたサーバーのことで、遠くの1台のサーバーから配信するより速く届けられます。近ければ近いほど転送が速いのはインターネットだって同じなのです。
さらにEmDash自体は普通にNode.jsが実行できる環境でホスティングできるので、最悪Cloudflareを使わなくても動かせます。

言い換えれば、レンタルサーバーでPHP同様にアップロードして使えるか、で言えばそれはNoです。その点でいえばちょっと敷居は高いかもしれません。

セキュリティ面

もう一つ、WordPressとの大きな違いのひとつがセキュリティです。WPはプラグインも含めすべて同じ領域で動作する関係から、悪意のあるプラグインが入り込むとサイトの根幹に用意に影響を及ぼせます。EmDashはプラグインをそれぞれ隔離された場所で動かす設計になっているので、幾分安全です。

パスワード認証を持たない(Passkey認証とメール認証)など、このあたりの考え方もモダンです。

セキュリティ観点で見るWPとEmDashのアーキテクチャの違い

HTML保存ではない

コンテンツの保存形式も違います。WPはHTML(Webページを作るための言語)でそのまま保存しますが、EmDashはPortable Textという形式を使っています。スタイルとコンテンツを分離するという上では理にかなっていますが、WordPressでHTMLベタ保存の世界観に慣れていると融通が聞かないと感じる瞬間は時折あります。

実際に移行してみてどうだったか

基本的な要素は数日で移行できました。デザインは概ね昨年地点で固まっていたので、リリースに向けて作り込みをしつつ、その間にEmDashそのもののアップデートにも追従していったという感じです。

※結果としてEmDashの特性も理解できてよかったと考えています。

追い込みを掛けるモーゼ(イメージ)
追い込みを掛けるハラダ(イメージ)

移行してみて個人的にうれしかったのは、CMS層も含めてAstroの開発体験にきれいにまとまっていたことです。
WPをHeadless化する構成だと、記事のプレビューや編集コントロールのためにWP側のAPIを外部に向けて開いておく必要があります。さらにプレビュー用のレンダリング処理もフロントエンド側に持ち込まなければならず、「編集側の都合」がコードのあちこちに滲み出てきて実装が汚くなりがちでした。
※これ、WordPressをヘッドレス化して組み合わせてる制作会社さんのあるあるなんじゃないかなと勝手に思ってます。

EmDashはCMS機能がAstroプロジェクトの中に収まっているので、余計な口を外に開けずに済みますし、編集機能都合でフロントエンド側の実装が複雑化しにくいと感じています。

まさに私が欲しかった類のCMSの形をしている、というのが正直な感想です。

Astroのロゴのついたりんごに、Vueロゴのついたペンが刺さっている

ベースがAstroというのはやはり大きいポイントです。 Astroは Vue.jsやReactのコードをそのまま持ち込める ので、過去に作った資産を再利用しやすいです。実際、Nuxt.jsで開発していたときのVueで書かれたコンポーネントを持ち込めたので、移行コストは思っていたより低く済みました。
(一度Astro単体での実装を試みていたことも、試作したAstro版の実装を流用こそしていないものの、実装のスムーズさに寄与したと思います)

いちばん厄介だったのはパフォーマンス問題でした。初期バージョンは初回アクセスがやたら遅い上に管理画面も使い物になるか不安レベルだったのですが、バージョン 0.10.0になったぐらいには概ね使えるレベルで解消されました。まだ若いプロジェクトのわりに成熟スピードは悪くない印象です。

ほかにハマった点として、固定ページを作ろうとするとエラーが出てセットアップ画面に飛ばされる問題がありました。
そもそも管理画面上に固定ページを定義する箇所が見当たらないというのが正確なところで、ドキュメントが追いついていないというより、まだ実装されていない機能という側面もありそうです。編集機能そのものは、こうした面からもまだまだ荒削りだなと感じる部分のひとつです。

いずれにしても、自分がやりたい表現だったりと、静的サイト生成馴染みのある編集体験を持つCMSの組み合わせが無理なく組み合わさって、 無理なく高速化できている のは魅力 でしか有りません。

Lighthouse参考値
無理のないチューニングで、Performanceも時折80オーバー出る程度には速い。

EmDashこんな人に向いている・向いていない

向いていると思う人:

  • モダンなCMS構成でサイトを新規に立てたい人
  • リッチなWeb体験を作り込みたい人
  • WPのプラグインセキュリティ問題が気になっていた人
  • ClaudeCodeなどAIを使ってサイトを作りたい人
  • Cloudflareが好きな人
  • MCPとか使いたい人(標準でMCP対応してます)

向いていないと思う人:

  • インフラの知識に自信がない人(セットアップにはある程度の技術知識が必要です)
  • WPのエディタをプラグインでがりがりカスタマイズして運用したい人(プラグインエコシステムはまだこれからです)
  • Cloudflareの無料プランだけで完結させたい人(一部機能は有料プランのみ有効です)
  • 既存のWPサイトをそのままスライド移行したい人

EmDashの率直な現状評価

「新規サイトなら十分アリ」というのが今のところの結論です。ただしそれは 「課題がない」という意味ではありません。

編集回りの挙動など荒削りな部分はまだ残っていますし、WPの既存資産をそのまま持ち込む移行はハードルが高いです。コンテンツの書き方も多少慣れが必要ですし、挙動を追いかけるうえでソースコードを読まないといけない場面もあります。運用ノウハウも手探りで、「これが正解」と言えるほど枯れていません。
それでも、Cloudflareのエッジインフラ上で動くAstroベースのCMSというだけで素直に可能性を感じていますし、エコシステムもこれから育ってきそうな気配があります。前述の通りMCPサーバーも持っているので、AIによる効率化も期待できます。

当面は足りないものは自力でどうにかする精神で、いろいろパッチなり書いてカスタマイズしていく感じでしょうが、これも黎明期の醍醐味かな、と。実際すでにいくつかの投稿タイプで、結構プラグイン作ったりとかして対応したものもあります。
(例えば、この記事冒頭のチャットやつとか、実は内製プラグインです)

少なくとも、ある程度本格的に運用する目線で1か月ほど触っている感じ、今後も付き合っていけそうな手応えが十分あるCMSです。
ご興味あればぜひ一度っていただきたいと思えるものだと感じています。

※Webサイト開発のご相談もお気軽にどうぞ!弊社は敷居が地面よりも下にあるような会社ですのでご安心してお問合せください。

次回は、デザインの話….もしくはAI開発で如何に乗り切ったかというお話か….とにかく続きます。